橘玲の本は昔から読んでいた。 マネーロンダリング、永遠の旅行者、タックスヘイブンの小説三部作はアングラな 金融犯罪に興奮もしたし、今でもまた再読してみたいと思っている。
そんな橘さんが11年ぶりに小説の新作を出したのだ。「HACK」だ。 タイトルからも分かるが、主人公もハッカーであり、ハッキングや暗号資産、ゼロデイ・ゼロクリックのエクスプロイトの話などが出てくる。
ソフトウェアエンジニアをしているので、そういった技術には詳しいが、ゼロデイ・ゼロクリックの危険性だったり、 国際的な組織がそういうエクスプロイトを使って何をしているか、何ができるのかについては詳しくなかったので 大変興味深かった。
考えてみてほしい。ゼロデイなので何も対策されていない脅威があり、それがゼロクリックでインストールされてしまうとしたら。 そして、それがいつも肌見放さず保有しているスマホが狙われたとしたら。 ある日、SMSが届いた。開いてもいないSMS一通でスマホが乗っ取られたとしたら。 とても恐ろしいとは思わないだろうか。
技術的なこともさることながら、どこか親近感を感じる主人公。 自分自身、タイ・バンコクには10年ほど住んでいたことがあるので、 小説に出てくる場所もほぼすべてリアルに想像できる。 ルンピニ公園、ヤワラー、ワット・アルンの見えるレストラン、サパーンタクシン駅、トンロー、ランナム通り… どこもなにかの思い出があるし、その空気感もまだリアルに覚えている。 本当にいろんな場所が出てきたので、そういった意味でも楽しめた。 たくさん取材したんだろうなというのがよく分かる。
この本の最後に参考文献のリストがある。25冊以上ある。 こういう参考文献が載っていると、興味があることをもっと掘り下げられるので大変ありがたい。 自分もいくつか興味のある本を読んでみようと思う。
